儲かる事業をご提案|ミスターマーケティング
COLUMN 儲かる10億円ヒット商品・事業をつくる「カテゴリーキラー戦略」コラム

第88話 新規事業で数千万円を失わない方法とは?


「この新規事業で、既に、数千万円投資しています。ここで、やめるわけにはいかないのですが、どうしたらよいでしょうか。」

 

※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと。


 

冒頭の相談をされたのは、あるサービス系の事業を行っている経営者です。

本業は、法人向けのサービスを展開しており、事業規模は20億円ほどで安定しています。冒頭の相談は、これからはじめようとしている新規事業についての相談でした。

 

既に数千万円投資しているということでしたが、それはその会社にとって全く経験がない、システム関連の開発をするという異分野への挑戦でした。

 

ある程度、企画を進めている段階で、その分野の競合他社もよく見えてくるようになり、非常に厳しい戦いになることも分かってきました。

そして、「こうすれば売れる」と最初に抱いていた仮説も、果たしてその仮説はあっているのだろうか?ユーザーに受け入れられるのだろうか?という疑念も湧いてきました。そのような状況で、焦りも出てきて、当社へ相談に来られました。

 

このようなことは、特段この会社だけのことではなく、多くの会社に見られることです。本来であれば、数千万円の投資をする前に、競合の会社やターゲットがもつニーズなどをある程度把握する方法はあったはずです。

しかし、多くの会社がこういった、大切なことを検証せずに、思いついたプランをどんどん進めてしまいます。

 

なぜ、このようなことが頻発してしまうのでしょうか?

 

それは、思いつきやひらめきで行動をすることは、人間が持つ本来の習性だからです。特に、素晴らしい技術を持つ会社とのご縁があったときや、これまでにないようなアイデアを思いついたときは、妄信的に物事を進めてしまいがちです。

 

これはいける!という直感的なひらめきと、湧いてきたワクワク感の気持ちよさから、一歩引いて冷静に見られなくなってしまうのです。

 

このことを私は「妄信的仮説」と名付けました。

 

まず、人は「妄信的仮説」で突っ走ってしまう性格があるということを認識する必要があります。

 

そして、いったん技術提携をする相手と話が盛り上がってしまったりすれば、お互いに、「妄信的仮説」のスパイラルにはまり、イケイケのムードになり、その流れは益々止められなくなっていきます。(こうなると、我々が検証の必要性を指摘しても、止められないこともあります)

そうして気づけば、大切なことを検証する前に、お金と時間をつぎ込んでしまうのです。世の中には、「妄信的仮説」のみで突き進んで、会社を倒産させるケースは、たくさんあります。

 

重要なことは、まず、目的をはっきりさせることです。

 

たとえば、「技術提携によって、自社の事業を加速させる」という目的があるのであれば、たまたま知り合った提携先といきなり手を組むのではなく、他にもっとよい提携先がないか調べて、その上で、比較検討をしてベストなパートナーと組むということが大切です。無駄な時間や、失敗確率を大きく低減できます。

 

また、「自社のもうひとつの売上の柱を生み出す」という目的であれば、「技術提携をして特定の商品・サービスを生み出す」という考え方以外の選択肢はないか、を考えることも大切です。技術提携をするということは、ひとつの仮説に過ぎないからです。

 

たとえば、既存の商品を改良して、別のターゲットに喜ばれる形にできないか?とか、商品を特段に変えなくても、営業力を活かして、別の業種を攻めることができないか?ということです。

 

要は、「こうすれば売れる」という仮説の選択肢を一度広げ、あらゆる仮説を徹底的に考えて、そのうえで絞り込んでいくという作業が必要です。

この作業を繰り返していくことで、「こうすれば売れる」という仮説の精度を、スタート時点から引き上げることができます。

特に新規事業における「戦略」とは仮説そのものですから、この作業は「戦略」の精度を引き上げると同義です。このことが、新規事業で投資する数千万円、数億円という資金を失わないための最初の大きなポイントです。

この作業があるのとないのでは、走り始めてからのスピードや成功確率に大きな差が生まれます。

 

「こうすれば売れる!」仮説A

「こうすれば売れる!」仮説B

「こうすれば売れる!」仮説C

ほかにも、仮説D、E、F、G・・・・・

という感じで、徹底的に考えます。

 

この中で、あなたの会社にとって、一番魅力的な仮説を選択するのです。

 

よくあることが、社長がポロッと言ったことを、そのまま進めてしまうパターンです。社長は、あくまでも仮説の一つとして考えているものの、部下もそれで盛り上がってしまえば、お互いに「妄信的仮説」のスパイラルにはまってしまう可能性があります。

ここで、できる部下であれば、相手が社長でも、目的が●●であれば、●●という選択肢もあるのではないですか?と返すことが望ましいですが、そういうことが提言できる人財は、なかなか少ないでしょう。

ですから、優秀な部下に期待する前に、社長がまず「妄信的仮説」にはまっていないか、自分自身を見る癖をつける必要があります。

 

仮説としての選択肢を広げていくポイントは、右脳と左脳をうまく使うことです。

つまり、右脳でアイデアを広げ、左脳でそのアイデアを冷静に検証します。これを繰り返して仮説の精度を高めます。

当社のコンサルティングでも、このように右脳と左脳の作業を繰り返して仮説の精度を上げていきます。

 

コンサルティングを受ける会社の中には、この検証が甘く、なかなか、結論にたどり着かないプロジェクトもあります。そんなとき当社は、このプロセスがいかに大切かを知っているので、しつこく何度も課題を出して、検証してもらいます。

なぜなら、その後の事業のスピードや成功確率を上げることができるからです。言い換えれば、無駄なお金と時間を最初からセーブすることができます。

 

また、コンサルティングを受ける会社の中には、取り組む熱量が低く、しっかり課題に向き合ってもらえないプロジェクトもあります。そういうプロジェクトは、残念ながら、仮説検証の精度が低く、なかなか形にならない傾向があります。

やはり、うまくいくプロジェクトは、この検証ステップを徹底的に行っています。素直に一生懸命にやる姿勢が大切になります。そういうプロジェクトは、会社ごとの状況によって時間差はありますが、かなり高い確率で成功します。

しっかりと考えた選択肢から、最適なものを選ぶわけですから、それは当然の結果とも言えます。

 

ある新規事業開発を行ったプロジェクトでは、新規事業の案を生み出す際に、合宿を行うなどして、徹底的に考え抜いて、100近いプランを考えたチームがありました。

こちらの会社は、長い歴史を持つ会社でしたが、これまでに何度も新規事業案を考えるものの、なかなかうまく立ち上がらなかった経緯がありました。

そこで、当社のコンサルティングを受けることになり、この時はじめて、納得がいくプランができたということです。そして、その事業は1年もたたずに順調にスタートさせることができました。

 

 新規事業は、検証が甘いまま立ち上げて、立ち上げてから苦労するのではなく、最初に徹底的に仮説を検証して生みの苦労をするべきです。その上でスタートすることがベストです。何でも成果を出すためには、力を入れる順番が大切です。

 

最近は、コロナ禍で「DX」という言葉が先行している傾向が散見されます。

「DX」とは、「デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)」の略語で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。このこと自体は、大きなトレンドですし、コロナ禍の中で次の事業展開においてITを活用していくことは良いと思います。

 

しかしながら、「DX」という概念が先行して、目的に即した「仮説」をよく検証せずに、ある程度の着想だけで、いきなりシステム会社に問い合わせをして、システムづくりを進めてしまう話を度々見聞きします。

これは非常に危険です。大切なお金と時間を無駄にしてしまう可能性があります。

 

そのような危険な傾向がある会社が相談に来られたら、いったんシステム開発を止めてもらいます。しっかりと市場を見て、検証ができている場合は別ですが、そのような会社にお会いしたことはありません。

 

多くの場合が、作ってしまえばその先に未来がある!と信じ込んでいます。

そのような「妄信的仮説」で走っているときに駆り立てられるのは、「とにもかくにも、はやくスタートしたい!」という気持ちです。スタートが楽しみでしょうがないのです。

 

これは、システムに関わらず、新商品や新サービスなども同じです。早くつくりたい!そして早くお金にしたい!というのが経営者の素直な気持ちだと思います。

 

しかし、ここで、ぐっと一度冷静になって、仮説を検証することが成功のポイントです。「戦略」の詰めが甘ければ、その後の成果はどうしても中途半端になってしまいます。ひどい会社は、この失敗サイクルを繰り返しています。

そうならないためには、やはり、

 

一度立ち止まって、そもそもの目的は何か?

その目的を達成するための「仮説」は1つに偏っていないか?

 

そういうシンプルで重要な視点を見失わないことが大切です。

 

このように「妄信的仮説」で突っ走ってしまうことは、新規事業などの「戦略」をつくるときだけに限らず、新規事業を立ち上げた後の取り組み、つまり「戦術」の打ち手についても同じことが言えます。

 

「こうすればうまくいく!」という「戦術」の仮説は本当に正しいか。それ以外のチョイスはないのか?ということを慎重に考える必要があります。

 

当社はマーケティングの専門会社ですので、「戦略」だけでなく、具体的な「戦術」の相談も日々受けます。

このときも、やはり、戦略の仮説と同じく、「妄信的仮説」の罠にはまってしまっている会社が多いと感じます。

 

よくあるのが、知り合いに「プロモーションが得意な会社があって」とか、その他なんらかの戦術的な助けになる会社とご縁があるということで、その会社にお願いしようとすることです。

それは、特別悪いことではないですし、リスクが小さければまずやってみるということも大切です。また、身近で信頼できる方に依頼することも自然です。

しかし、その前にやるべき大切なことは本当にないか?

「こうすれば売れる!」という選択肢でもっと大切なことはないか?その会社以外にも有能な会社はないか?など、いったん選択肢を広げるということが大切です。

 

もちろん、いつまでも考えて、絶対的な答えが出てくるわけではありませんし、トライ&エラーという考え方も大切です。しかし、ここでお伝えしたいのは、一つの仮説を妄信して進むことと、しっかり考えて、数ある選択肢の中からベストな選択をするのでは、成功確率が大きく変わるということです。

 

会社が投資するお金も大切ですが、もっと大切なことは、そこにかける時間ではないでしょうか?1年、2年、3年と時間を使ってしまってから気づくのと、最初に大切なことに気づくのでは大きな違いがあると思いませんか?

そのためにも、ひとつの「妄信的仮説」で突き進むのではなく、目的に向かって、よくよく考えてベストな仮説を選択して欲しいと思います。

 

いま社長がやろうとしているプランは、仮説の「選択肢」が狭すぎませんか?

 

株式会社ミスターマーケティング

代表コンサルタント

村松 勝

 

追伸:

仮説の選択肢を考える際に役に立つノウハウについて、当社の経営者セミナーでじっくりと時間をかけて解説しています。

特に、新規事業プラン、新商品、新サービスプラン、また既存の事業をどうやって伸ばしていこうかお考えの経営者にお役にたてる内容です。

これまで14年、300社以上を指導してきた経験から、社長が考えるべき戦略の骨子、全体像ついて、具体事例とともに丁寧にお伝えしています。まだ、ご参加頂いたことがない方はぜひご活用ください。

 セミナーの詳細はこちらから。