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COLUMN 儲かる10億円ヒット商品・事業をつくる「カテゴリーキラー戦略」コラム

第122話 新商品の販売で、失敗している会社に共通する3つのこと

 

「先生、1年ほどから、社運をかけた新商品を売っているのですが、なかなかうまく売れません。

   なんとかして、カテゴリーキラーにしていきたいのですが、どうしたらよいでしょうか」

※カテゴリーキラーとは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと

 


 

冒頭のコメントは、今年に入ってから当社の個別相談をご利用された、差別化戦略を模索しているハウジング関連サービス業の経営者からのご相談です。

 

この新商品は、お客様のためになる素晴らしい商品で、多くの人に利用してもらいたいと考えて販売に力を入れてきましたが、予想以上に苦戦しているとのことでした。

この数日後に、ある会社から同じようなご相談を受けました。

 

こちらの会社は、もともとネット通販を中心に特定ジャンルの機器を販売していたのですが、今後は自社オリジナルの商品を開発して、メーカーに転身していこうと考えていました。初の新商品開発であると同時に、自社商品を製造販売するという新規事業の挑戦でもありました。まさに、社運をかけた挑戦です。

そして、前述の会社と同じく、1年ほど販売してきましたが、思ったほど売れないとのことでご相談に来られました。

 

また、先日、当社のセミナーに参加された、小売店の経営者は、思い切って店舗コンセプトを変えて、新しいサービス形態でスタートしたが、以前より厳しい状況に陥ってしまったということで、ご相談に来られました。

 

このように、新商品や新サービスの販売に挑戦するものの、思ったように売れず、当社に相談に来られるケースは、過去にも多くございます。

 

社運をかけた新商品や新サービスの販売は、社長の思い入れが強い場合も多く、それまでにかけた時間やお金を考えると、そう簡単にはやめられません。このように、思い入れが強い商品やサービスが売れないとき、多くの場合、Webプロモーション、チラシ、DM(ダイレクトメール)、飛び込み営業などの「売り方」に力を入れます。

しかし、一向に売れない状況が続くことがあります。

 

そして、厳しい状況の渦中にあると、

 

いったい何が問題なのか?

どこから手をつけて改善していけばよいのか?

この状況はいつまで続くのか?

 

と、毎日のように経営者を悩ませ続けます。それは、出口のない迷路に入ってしまったような感覚になり、だんだんと諦めムードも漂ってきてしまいます。

当社の経験では、新商品の販売で失敗している会社に共通することは、概ね以下の3つに集約できます。

 

◆第1の失敗 「売りの仮説」が間違えている

◆第2の失敗 「徹底したブランディング」ができていない

◆第3の失敗 「販売活動」の細部を追求できていない

 

この3つの失敗の中で、自社の新商品は、どこで失敗しているかを真剣に追及して、    改善しない限り、状況が好転することはないでしょう。これから先も、同じ失敗を繰り返してしまわないためにも、いったん立ち止まって検証する姿勢が欠かせません。

それでは、それぞれの失敗について解説したいと思います。

 

 

◆第1の失敗 「売りの仮説」が間違えている

 

社長の思い入れが強い新商品は、「この商品は、○○○というニーズをもった多くの    お客様に絶対に売れる!」という仮説をもとに、開発をしたり、仕入れをしたりして販売にこぎつけます。

しかしこのときに、本当にニーズがあるのか「売りの仮説」について、よく調査や検証をしないで、進めてしまうことがあります。そして実際に販売してみると、あまり売れず、そもそもニーズがなかったということに気づくことになります。

 

このように、この根本的な「売りの仮説」が間違えてしまっていると、商品そのものの企画から見直して、再設計をしないと修復できません。例えば、商品であれば、どんなにパッケージデザインに力を入れてもまたウェブサイトを変更してみたりしても、そして、どんなに販売活動を強化しても、大きく売上を伸ばすことは難しいでしょう。

 

しかし、もし社長が「売りの仮説」から見直して、再度挑戦しようという気持ちがあれば、チャンスは生まれます。もちろん、大きな軌道修正になるので、それなりの時間とコストはかかりますが、当社の経験上、社長のやりきる想いが強ければ、かなりの確率でうまくいきます。

 

ある加工メーカーは、下請け脱却にむけて社運をかけて新商品を開発したものの、全く売れず在庫の山になってしまいました。諦めかけていたときに当社と出会い、一緒に「売りの仮説」から見直して、リブランディングをしました。結果は、在庫を一掃しただけでなく、会社の売上を支える商品に生まれ変わりました。

 

他にも、食品、雑貨、家電、など様々なジャンルで「売りの仮説」から見直して、しっかりと売れる新商品を生み出せるようになった例がたくさんございます。また、かなり状況が厳しかった例として、廃業寸前から再起した工場、飲食店、クリニック、経営危機にあった卸売販売会社などがございますが、いずれも「売りの仮説」から見直して良い経営状態に立ち直りました。

 

経営危機にある渦中では、社長の心境もかなりきつい状況だったと思います。皆さん肩を落とされて、ご相談に来られます。そんな状態から、なんとか希望をもっていただき、一緒に挑戦してきました。

もちろん、簡単ではないですが、ひとつひとつ丁寧に市場を分析して、やるべきことを丁寧に積み上げていくことで、勝機を見出しています。

 

 

◆第2の失敗 「徹底したブランディング」ができていない

 

「売りの仮説」が間違えていない場合でも、なかなか新商品や新サービスの販売が伸びていかないことがあります。それは、その商品の魅力が、メインターゲットに響いていないケースです。これは、ブランディング(表現の魅力化)の失敗です。

 

「ブランディング(表現の魅力化)」とは、例えば、新商品のネーミング、タグライン(商品を訴求するために考え抜かれた文章)にはじまり、パンフレット、ホームページ、プレゼンテーション資料など、その商品を表現するものすべてのレベルを引き上げて、ターゲットの心に刺さる表現開発をすることです。店頭に置く商品は、パッケージデザインやPOPなどもかなり重要です。

 

これらの表現開発をターゲットに伝わるように考えること、それが「徹底したブランディング」です。

 

ただし新商品を、信頼関係がある既存のお客様にご案内して、丁寧に説明したうえで買ってもらうようなケースは、ブランディング(表現の魅力化)があまりできていなくても、一定量は売れるでしょう。

しかし、新商品の販売を通じて、新しいお客様へ広げていきたいと考えているとすれば、苦戦を強いられます。新しいお客様は、そもそも、あなたの会社や商品に興味を持っていない人たちです。そのようなお客様に対して、お客様が興味を持つ前に、あなたから売り込もうとすると、逆効果です。無理に販売しようとすれば、値下げを要求されるのがオチです。

 

新しいお客様に買ってもらうための重要なポイントは、「徹底したブランディング」をすることです。お客様がその商品を見たときに、飛びつくぐらい、ぐっと惹かれる、魅力的なブランディングが必要です。

 

「徹底したブランディング」ができていないまま、新商品の販売をすると、お客様に魅力が伝わらないために、どうしても苦戦してしまうのです。まず、「徹底したブランディング」をします。そのうで、販売活動をする。この順番が大切です。

 

「徹底したブランディング」は、どんな業種、どんな売り方でも必要です。

 

 

第3の失敗 「販売活動の細部」を追求できていない

 

せっかく「徹底したブランディング」ができても、販売活動で失敗しているケースもあります。特に多いのが、これまでに自社で経験がない販売方法に挑戦するケースです

 

世の中には、多くの販売方法がありますが、どの販売方法においても、しっかりと売上につなげていくためには、試行錯誤を繰り返して、「販売活動の細部」を追求する必要があります。

自社がこれまで実施したことがないような販売方法にいきなり挑戦するような場合、はじめからうまくいくケースの方が稀です。

 

たとえば、ネット通販をやったことがない会社が、ネット通販を始めて、すぐに大きな売上を上げることは難しいでしょう。お客様に自社商品を認知していただき、購入してもらうまでの「販売活動の細部」で、追求すべきことが山のようにあります。テストと改善を繰り返し続けていく経営スタンスが必要です。

また、逆にネット専門で販売していた会社が、同じスタッフに、営業をさせようと思ってもすぐに成果は出ません。

 

他にも、ダイレクトメールやチラシなどの紙媒体を使った販売方法も、経験やノウハウなしに挑戦してもなかなか思うように成果は出ません。ここでも、やはり、細部まで気を配ったコピーライティングや、見せ方の工夫などが必要です。この点が欠けていれば、何度実施しても、せっかく紙面を見て頂いたお客様を、次の行動につなげることができません。

 

BtoBの販路開拓であれば、展示会を活用する会社も多いでしょう。

展示会も、しっかりと集客をして成果を出すためのノウハウを身に着けるまでに、それなりの時間がかかります。

出展する展示会の選定、展示商品の検討、ブースの設計・演出、当日の運営、終了直後のフォロー、長期フォロー体制の構築など、全てにおいて競合他社との差別化を意識しつつ「販売活動の細部」を追求して、精度を上げていく必要があります。

 

さらに、BtoBの場合は、集客した見込客を営業マンがクロージングしていくための個人の営業スキルもかなり重要です。これができないと、見込客の集客で成功しても、クロージングができないため、なかなか成約につながらない状況が続きます。

ここでは、クロージングまでのシナリオの細部に気を配り、改善していく必要があります。ちなみに、うまく成約しない原因が、個人のスキル不足ということに経営者が気が付かなくて、何年も状況が変わらない会社も多くあります。

 

いずれの販売方法についても、共通することは、競合他社がひしめいているということです。その中で、いかに埋もれずに、自社のお客様に到達して、成約していくかという点について、「販売活動の細部」を追求していくスタンスが必要です。

もし、自社に経験がない販売方法に挑戦する場合は、長期で実践と改善を繰り返していくことが重要です。

 

ちなみに、「新商品の開発」と「新販路の開拓(新しい販売手法の確立を含む)」を同時に進めることは、経営リスクが高くなります。従って、当社ではあまりお勧めしていませんが、それでも強い想いで挑戦したいというケースも稀にございます。じっくり時間と手間をかけられる余裕がある会社は、挑戦してもよいと思います。

 

この時間や手間をあまり取れない場合は、お金をかけて解決していくことも選択肢として考える必要があります。具体的には、マージンを支払い、特定ジャンルの販売会社と提携したり、経験がある人材を雇ったり、プロの指導を受けるなどの選択肢があります。

 

 

ここで、ひとつT社の事例をご紹介したいと思います。

T社は、ご相談に来られた当初、以下のようなお悩みを持たれていました。

 

「当社は、大手建設会社からの受託で、特殊な加工処理サービスを提供しているのですが、近年、類似したサービスを提供する会社が増えてしまい、価格競争が厳しくなってきました。

そこで、何年か前から、新規事業として、この加工処理サービスをBtoC(一般戸建市場)へ展開すべく自社ブランドを立ち上げたのですが、これがうまくいっていません。なんとか、この新規事業を成功させたいと思っているのですがご指導をお願いできないでしょうか。」

 

T社は、比較的若い人材の採用に力を入れていたため、この新規事業を成功させることは、彼らの未来をつくる重要な事業と考えていました。

 

「うちの会社には、未来がある。どんどん、新しいことに挑戦できる社風があると、胸をはって言える会社になりたいのです」

と言うのが、T社の心からの願いでした。

つまり、新規事業を成功させて目先の売上を上げるだけでなく、会社として社員に夢や希望を与えることが、大きな目的だったのです。ですから、この新規事業で、なんとしても成果を出そうとする姿勢がひしひしと伝わってきました。

 

T社は、ブランディングに対する意識が非常に高く、実は当社の指導を受ける前に、ブランディング専門のデザイン会社に大金を払って、ブランドネーミング、ブランドロゴマーク、ホームぺージなどにも投資をしていました。

 

しかし、そのブランディングの効果はなく、売上につながらず、悩んでいたところで、当社の書籍「儲かる10億円ヒット商品をつくる!カテゴリーキラー戦略(セルバ出版)」を読まれ、当社の存在を知り、指導を受けることになりました。

 

大金を払ってプロにブランディングを依頼してうまくいかなかった場合、普通の会社であれば、諦めてしまうと思います。

しかし、T社は、もう一度やり直してもよいので挑戦したい、ということで当社に来られました。ここまで、本気でやりきる決断ができることは、すごいことだと思います。

 

実際にコンサルティングがスタートして、状況を分析していくと、T社が取り組まれてきたブランディングには、大きな欠点がありました。

それは、ホームページを見ると、一見かっこよくデザインできているのですが、「何屋さんか、よく分からない」というものでした。

 

もちろん、ホームページをよく見れば、理解できるのですが、新規のお客様は、何屋さんか、よく分からないホームページをじっくり見てくれることはありません。

 

T社は、この新規事業を成功させるために、以前からネット集客に力を入れていましたが、このままでは、そのコストが無駄になってしまうことは明白でしたので、まず、その点を指摘させてもらいました。

この点は、前述した“徹底した「ブランディング」ができていない”という点において、失敗していたことになります。

 

では、何屋さんかが伝われば売れるようになるかといえば、決してそれだけでは、売れません。もちろん、何屋さんかが分からないよりは売れると思いますが、力強く事業を成長させるようには売れません。

なぜなら、そこには必ず競合他社が存在するからです。

通常、新規のお客様が商品やサービスを購入する際には、他社と比較します。この比較検討で、選択されなければ、売上につながりません。

 

ですから、比較検討される際に、「競合他社との差別化」ができており、圧倒的な優位性があるということを理解して頂き、購入の意思決定をしてもらう必要があります。

 

この差別化が、顧客目線でしっかりと設計されていることが重要になりますが、T社はこの点の追求ができていませんでした。つまり、“「売りの仮説」が間違えている”という点に、あてはまっていたのです。

 

「競合他社との差別化」については、うちの会社では、そんなことはできない、と考えている中小企業の経営者は非常に多いと思います。そもそも、考えようとする姿勢がない会社がほとんどではないでしょうか。

 

しかし、この「競合他社との差別化」を実現させるという、核心的な経営課題から目をそらして、「利益率を高めたい」「高い給与を払えるようになりたい」ひいては「人を大切にする会社になりたい」と願ってみても、絶対に難しいと思います。

理由は、どんな業界でも、商品・サービスの価値は、競合と比較したときのお客様からの評価で決まるからです。その価値が高いほど、利益につながる市場原理になっています。

 

T社の状況を整理すると、まず「競合他社との差別化」が見い出せていませんでした。その状況で、ブランディング専門のデザイン会社に依頼したところ、若者に受けそうな、今時のおしゃれなデザイン表現はできたものの、何屋さんかさえもわからないブランディングになってしまっていたのです。

 

このように“第1の失敗 「売りの仮説」が間違えている”および“第2の失敗 徹底した「ブランディング」ができていない”というダブルパンチの状況で、WEB集客に力を入れていたので一向に成果が出ませんでした。

しかし、よかった点としては、WEB集客に関しては、自社でマーケティング課を設けて、何年もかけて学びと実践を繰り返して、細部まで追求する体制ができていたことです。そのため、“第3の失敗 「販売活動」の細部を追求できていない”という状況では

ありませんでした。これまで、そのことに真剣に取り組まれてきたおかげで、WEB集客の分野のスペシャリストと、その運用体制が社内で確立されつつあったのです。

 

T社は、当社の指摘を真摯に受け止めて、第1の失敗と第2の失敗を克服すべく、一生懸命に課題に取り組まれました。現場のリーダークラスの方が5名体制で、毎回、しっかりと時間をかけて調査や議論をして、当社のコンサルティングを受けられました。

およそ1年がかりで、コンサルティングプログラムをすべて終え、素晴らしいカテゴリーキラー戦略が完成しました。

そして、すぐにその戦略方針に従って、ホームページをリニューアルし、WEB集客を稼働させたところ、かなり早い段階で成果を出し、以下のご報告を頂きました。

 

「おかげさまで、問合せ件数は前年比284%、 売上は333%となり、目に見える成果が出せて嬉しいです!

プロジェクトに参加したメンバーも大きく成長しました!」

 

プロジェクトに参加された、メンバーの皆様の熱い想いがカタチになり、これまで停滞していた新規事業のムードが変わっただけでなく、会社全体への良い影響も生まれました。当社としても大変嬉しいご報告でした。

 そして、さらに嬉しかったことは、その後T社は、その勢いで、当社で習得したカテゴリーキラーづくりのノウハウを活かして、別の新規事業も成功させたのです。

 

この新規事業は、お客様の困りごとを解決する新しいサービスで、新市場を創造していく革新的なプロジェクトです。

このときは、当社の指導はなく、自分たちの力でやりきり、以下の報告を頂きました。

 

「反響が大きすぎて、受注しきれないほど忙しくなっています!

   前回教えてもらったノウハウを活かして、2つ目の新規事業もぐんぐん成長しています!」

 

T社は、この2つの成功体験をもとに、若い社員の方が、これまで以上に、会社や自分たちの仕事の未来に希望を持てるようになりました。

T社は、これから先も、自分たちが描く理想や夢をカタチにできると信じて、さらに戦略づくりのノウハウを高めながら、多くの挑戦をされると思います。

このT社の例は、経営に欠かせない「戦略づくり」と、「組織づくり」を両輪で回している好例です。多くの経営者の参考になると思います。

 

もし現在、あなたの会社が新商品の販売で苦戦しているとすれば、いったん立ち止まって、本コラムでお伝えした以下の3つのことについて、じっくり検証してみてはいかがでしょうか。

 

◆第1の失敗 「売りの仮説」が間違えている

◆第2の失敗 「徹底したブランディング」ができていない

◆第3の失敗 「販売活動」の細部を追求できていない

 

問題を解決するための課題がずれていれば、いくら一生懸命に行動しても、成果にはつながりません。

大切な新商品をしっかりと販売して、売上拡大につなげていくために、まずは、どこに課題があるかをしっかりと見極める必要があります。

 

「新商品の販売」で、失敗を続けていませんか?

 

このまま大切な資金と時間を無駄にして、完全に失敗してしまう前に、この機会に真剣に考えて頂ければと思います。

 

 

追伸:

次回の開催は、3月19日(火)に「カテゴリーキラーの作り方セミナー」を開催します。まだ当社のセミナーに参加されたことがない方は、ぜひ一度ご参加ください。

すぐにセミナーを受講されたい方は、オンデマンド配信もしていますのでご利用ください。オンデマンド配信は、いつでも受講可能です。

(セミナー情報は、こちら → https://www.mr-m.co.jp/lp/

 

株式会社ミスターマーケティング

 代表コンサルタント

                                                                      村松 勝