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COLUMN 儲かる10億円ヒット商品・事業をつくる「カテゴリーキラー戦略」コラム

第121話 正しい危機感の育て方

 

実は年々売上が下がってきていて、社員にも『危機感を持って』と発破をかけているんですが、それなりに安定しているビジネスモデルでやっているので、なかなか火が付かずに、どうしたものかと悩んでいるんです

と、先日、あるBtoBビジネスを展開しているサービス業の経営者の方から、ご相談がありました。


業績がある程度安定した時期が長く続くと、今すぐ困ることはないため、特に何らかの行動を起こさなくなるのは、人間のひとつのサガと言えます。

しかし、コロナなどの突然の環境変化に加え、市場環境や競合環境が変わりゆく昨今、「現状維持が衰退につながっているのだ」ということを改めて認識することが、どんな企業においても必要となります。

 

それは、社員のみならず、経営者においても大切です。

それなりに企業規模も大きくなり、売上が安定した中で、事業承継を受けた2代目、3代目の方々の中には、今すぐ何か行動に移さなくとも、それなりに食べていける状態にあります。

 

そして、すぐに倒産するような心配や不安を抱かずとも、経営が続いていくように感じることもある場合や、何をどのように行動していったら良いかがわからない場合、とりあえずは、現状維持のまま月日が流れていきます。

 

ましてや、そのような環境にいる社員にとっては、行動して失敗するリスクを背負うぐらいなら、事なかれ主義を貫き通し、ある程度、自分の仕事をしっかりとこなせば、それ以上のことをしなくとも、それなりに給料は保証されます。

 

仮に、経営者が危機感を持って経営していても、社員にとっては、どこか他人事であり、自らが危機感を持って、会社のために売上を向上させていく行動を取れるような人材を見かけることはあまり多くありません。

 

そのため、経営者がいくら「危機感を持って」と言っても、社員にとっては、どこか上の空であることが往々にしてあります。

 

そもそもなぜ危機感を持つ必要があるのでしょうか。

 

それは危機感を持たなければ、現状を変えようと行動に移らないからです。

 

行動に移さなければ、現状が変わらないのは自明の理です。

そして、現状を変えようとしなければ、市場環境や競合環境は、どんどん変わるため、いつの間にか、ジリ貧になってしまうことは誰しもが理解できることでしょう。

 

例えば、受験勉強1つとっても、なんとしてでも受かりたい、という危機感もなく、勉強という行動をしなければ、合格することもありません。

また、スポーツにしても、なんとしてでも優勝したい、レギュラーになりたい、など、危機感を持って、練習という行動をしなければ、周りがどんどん練習して上手になる中で、現状が良くなることは1つもありません。

これはビジネスでも同じことが言えます。

 

ところで危機感と言っても、「正しい危機感」を持つことが大切です。

 

「正しい危機感」とは何か?

 

反対に、「正しくない危機感」とは何か、を先に説明すると、社員を無理矢理、追い込んで売上を上げさせようとすることなどです。

最近でも、ある中古自動車販売業を営む企業が、社員を追い込む形での成果主義を取り、結果として不正を招いたことは、誰しもが知るところでしょう。

 

ではいったいどのようにして「正しい危機感」を持って行動ができるようになるのでしょうか?

 

それには、大きく3つの要素、WHYとHOW、WHATに分解して説明し、社員に行動してもらうことが重要です。

 

まずWHATから説明しましょう。

WHATは、やっていることそのもののこと、例えば、提供しているサービスや、商品そのもののことを指します。製造業であれば、何かの製品、部品、サービス業であれば、サービスの内容などにあたります。

これは、どんな社員であっても、何を提供しているか、は理解できています。取扱商品、取扱サービス、これは理解できます。

 

次に、HOWです。

これは、どのように提供するか、つまり、戦略であったり、戦術であったりする部分です。取扱商品や取り扱いサービスを、どのような戦略、戦術で提供していくのか、このことをしっかりと理解して、行動できている社員は、実は多くありません。

それは、そもそも、経営者自身も戦略を持たずに、WHATである取扱商品や取扱サービスを、ただ売ってこい、と指示している場合、社員もまた、戦略、戦術を理解して、行動することはありません。

 

そして、最後にWHYとは何か? それは、その事業や仕事の行う目的、意味、ミッション、ビジョン、当社で言う「想い」のことです。

これが社員に浸透し、しっかりと腹落ちしているか、ということになります。

ここまで理解して、行動できている社員は、ほとんどいませんし、戦略同様、経営者自身も、WHYをしっかりと自分に落とし込んでいる方も少ないと言えるでしょう。

 

この、3つの要素、WHYとHOW、WHATにおいて、WHYという目指すべきビジョンがあり、そこに向けてどのようにたどり着くのか、という行き方としてのHOW、つまり、戦略が描かれ、WHYとHOWが社員に腹落ちしてこそ、そのビジョンを達成したいという行動につながります。

 

つまり、「ビジョンと現状との差分」を埋めたいと思うとき、そのことが「正しい危機感」となって、行動に移すことができます。

 

一方で、仮にWHYがどれほど強くても、その行き方であるHOWの戦略が示されていなければ、「正しい危機感」というより、ただただ「焦燥感」のみが生まれ、現状にいらだちを覚えるだけで、前向きに物事を進めることができません。

 

また、WHYがないのに、HOWを求めても、よい戦略は生まれません。それは、目指すべき場所がないのに、ただいたずらに行き方を考えているだけだからです。

 

 

さて、当社のお客様で、長くお付き合いいだたいている、ある製造業では、これまで社内でいくつかのチームのお手伝いをしてまいりました。

 

先日、その中で一番最初にお手伝いさせて頂いたチームのリーダーと話す機会があり、こんなことを話してくれました。

 

「お付き合いさせて頂いた当初の業績から、おかげさまでこのチームは5倍以上の売上・利益を伸ばしてきました。

 

その一番の要因は、最初に定めたビジョンとミッションでした。それらを定めるまでに時間がかかりましたが、そのことがチームメンバーにも、しっかりと腹落ちしました。

そのことで、あるチームメンバーは、それこそ365日24時間働く意気込みで頑張ってくれています。

 

そして今では、会社を引っ張れるようなチームになろうと思って、チームメンバーで頑張っています。それは、これまで戦略として進めてきたことに手応えを感じており、そのようなチームになれるんだ、ということに自信と良い意味での欲を持てるようになったからです。

 

コンサルティングがスタートした当初は、まだ規模も小さかったため、そんなことを思うようになるとは思いもよりませんでした」

 

上記のチームをAチームとしましょう。およそ1年間のこのAチームのお手伝いも終わり、この企業の別のチーム、Bチームもお手伝いすることになりました。

 

Bチームは、新規事業として立ち上げられたチームで、チームメンバーといっても、チームリーダーが1人のみのチームでした。

それにこの企業の社長と、またAチームのチームリーダーが、オブザーバーというカタチで参加してくれました。

 

Bチームのチームリーダーにも、この新規事業のビジョンとミッションを考えてもらいました。そして発表した際に、Aチームのチームリーダーがこんな発言をしてくれました。

 

「ちょっといいですか。今のビジョンとミッションの話を聞いて、正直、Bチームのチームリーダー自身が、まだ腹落ちしていないように思います。

 

コンサルティングの宿題を、きれいな文章でカタチにしてきただけで、本当に、そのビジョンにたどり着きたいと考えているのか、ミッションを果たそうとしているのか、を感じることができません」

 

この発言には、我々も驚きました。

我々がフィードバックするような内容を、このAチームのチームリーダーは、自らの経験を通して、ビジョンとミッションの腹落ちの大切さを代わりに語ってくれたからです。

Aチームのチームリーダーが、とても素晴らしい人材に育っていることを感じました。

 

その後、このBチームのチームリーダーは、素晴らしいビジョンとミッションを掲げ、戦略も練り直しながら、孤軍奮闘で頑張った結果、成果につながりつつある報告を受けました。

 

この製造業の社長は最後に、こんなことを語ってくれました。

 

「私は、この事業は成功する、という強い想いを持って、長期スタンスで、Aチームの事業、Bチームの事業にも投資をしてきました。

もちろん、自分の仮説が間違っていた場合には、中止したり、修正しますが、その仮説の正しさを追求したいという想いが、私にはあります」

 

「そうなる」と強い想いをもって、その事業をやりきれるかどうか。

そして、経営者自身のみならず、社員もその想いを持ってコトにあたることができるのか。

 

「正しい危機感」とは、そうした上で成り立ち、行動が伴い、成果につながるのではないでしょうか?

 

もし、あなたの会社が行き詰まりを感じていたり、市場環境や競合環境が変わる中で、苦境に立たされる可能性があるのであれば、改めて、事業のWHY(ビジョン、ミッション)とHOW(戦略、戦術)を描き、社員に浸透させ、組織で「正しい危機感」を持って、前に進もうと決意することが大切です。

 

繰り返しになりますが、「ビジョンと現状との差分」を埋めたいと思うとき、そのことが「正しい危機感」となって、行動に移すことができます。

 

どの企業も事業も、「現状維持が衰退につながっているのだ」としたら、前に進むこと以外の選択肢は無いのではないでしょうか。

そして、組織が一丸となって前に進むために、「正しい危機感」を育てることが大切なのです。

 

 

 追伸

 当社では、この事業のWHY(ビジョン、ミッション)とHOW(戦略、戦術)を考えていくことを「カテゴリーキラー戦略」と呼んでいます。

 ※「カテゴリーキラー」とは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと

 そして、貴社のカテゴリーキラー戦略を考える機会として、その具体的手法とさまざまな事例をお伝えするセミナーを隔月で行っています。

 次回は、919()に、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催いたします。

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株式会社ミスターマーケティング

代表コンサルタント

吉田 隆太