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COLUMN 儲かる10億円ヒット商品・事業をつくる「カテゴリーキラー戦略」コラム

第119話 社員の賃上げをするために、マーケティングが必要な理由とは?

 

今期、利益があまり上がっていないのですが、思い切って社員の賃上げを実施しました。固定費の増加を考えれば賃上げをしたくありませんが、そうしなければ、社員はより高い給料を払える会社へ転職してしまいます。また、人材採用においても、選ばれなくなってしまいます

と、先日、ある製造業の経営者の方から、現在の悩みを伺いました。


 

ご存じのように、昨年のロシアによるウクライナ侵攻の頃から、顕著に物価が上昇し始めました。それに伴い、政府も大企業を中心に賃上げをするように要請し、それに呼応するように賃上げ機運が高まってまいりました。

そして、新型コロナウィルスが感染症法上での「5類」へと移行し、1ヶ月ほど経ちますが、多くの企業が、需要の回復とともに、人手不足を訴えるようになりました。

仮にいくら仕事があっても、人手不足によって、受注できないような状況になる場合も出てきました。

冒頭の製造業の経営者も、そんなジレンマに陥るようになりました。

 

優秀な人材であればあるほど、より給料の高い他社へ転職してしまいます。そして、人材採用面においても、給料の少しでも高い会社に就職したいというのは、働き手の本音ではないでしょうか。

どれだけ理念的に素晴らしい会社であることを訴えても、やはり払えるものを払えなければ、背に腹はかえられないと、働き手から選ばれなくなってしまうのは必定です。

 

ではいったいどうしたら、中小企業が社員を雇用し続け、そして、人材採用につながる企業として、生き残り続けられるのでしょうか?

 

この答えの1つとして経営学に、「動機付け・衛生理論」があります。

 

少し言葉が難しいですが、大きく2つのことが、働き手の満足や不満足につながります。

 

まず「動機付け」についてですが、働き手が、仕事において「達成すること」や「承認されること」、「仕事そのものの内容」において満足感を覚えること、つまり、いかにして仕事への「やりがい」を与えられるか、ということが企業にとって重要です。

 

一方で、「衛生理論」とは、「給与」「作業条件」「会社の管理の仕方」などの、いわゆる制度などの環境面が不十分であると、社員は会社に不満感を募らせ、最悪の場合は、退社に至ります。

 

つまり経営者は、社員に対して「やりがい」と「働く環境」を整備しなければなりません。特に後者は、今叫ばれている「働き方改革」といった「働く環境」の整備が重要であることは、誰しもが知るところです。

 

ただ「働き方改革」で環境を整備せよ、と言われても、社員の残業を減らしたり、有給休暇や育児休暇を与えればよい、といった単純なことではありません。

 

それらの取り組みは、もちろん社会的にも大事なことですし、社員にとっても喜ぶべきことです。

しかし、経営側からすれば、社員のモチベーションも上がり、生産性が高まるといった側面もありながら、一方で現実的に、人件費のコスト増につながることも否めません。

 

社員に残業させないためには、雇用人数を増やして、仕事を回していく必要もあります。また、有給休暇や育児休暇で社員が休むということは、その分、他の社員の負担にもつながります。その負担軽減のためにも、新たな社員を雇用し、組織体制も考えなければなりません。

 

しかし新たに雇用と言っても、人手不足によって雇用できない、給料を上げなければ人も来ない、といった現状があります。

さらには、今の賃上げ機運というものも、人件費の増加につながります。

 

もし賃上げを考えるとき、多くの企業が、何とか現在の利益からやりくりしようと、人件費以外の固定費の削減や、またITやデジタル化などによる生産性の向上を考えるでしょう。

 

しかし、限られた利益を原資と考えるとき、それらにも結局限界がきます。

 

このように考えると、重要な処方箋は1つしかありません。

 

最終的に企業は、利益率や利益額を高める事業を行わなければ、人件費の原資が生まれない、ということに行き着きます。

 

つまり、粗利益の高い商品やサービス、事業を売って利益を稼げる、高収益型事業構造に転換する必要がある、ということです。

 

そして、それには何が必要でしょうか。

 

結論から言えば、マーケティングが必要になるということです。

 

それは、ただ単に、売り方の問題ではなく、売るモノそのものを売れるモノ、粗利益の稼げるものを考えていかないといけない、そして、当社では、そのことを「カテゴリーキラー」と呼ぶ、商品やサービス、事業にしなければいけないということです。

 

※「カテゴリーキラー」とは、競合他社を圧倒する差別化された強い商品・サービス・事業のこと

 

先日、日経MJを読んでいましたら、ホテル業のある著名な経営者が以下のように述べていました。

 

記者:「アフターコロナの観光業界で勝ち抜くために必要なことは?」

 

経営者:「コロナ前にあった課題に向き合うことだ。従来は、観光業だから休みが少なくて仕方ない、製造業より年収が低くて仕方ない、みたいなことがなんとなく許されていたが、それでは生き残れない。いまこそできていなかったことをやるチャンス。当社も給与を見直し、来春から新卒の給与を11.7%上げる」

 

記者:「持続可能な賃上げのためにはどうすべきか?

 

経営者:「自社の需要を増やすことだ。顧客満足度を維持できる範囲で単価を上げ、稼働率を高める。私はそこには結構自信がある。需要を作りだせるマーケティングパワーがあるかどうかだ

 

つまり、賃上げのためには、需要を作りだせるマーケティングが必要であり、マーケティングによって、単価と稼働率を上げ、粗利益額を高めることが重要だと言っているのです。

 

 

当社のクライアントでも、ある家電の製造業は、それまで下請けでのものづくりを行っていました。それは、価格決定権が、買い手側にあったため、常に粗利益率が低く、賃上げはもとより、借入金も返すことも難しい状況でした。

 

当社の指導によって、自社商品であるカテゴリーキラーを生み出しました。そして、これまで小売業を通してしか販売してこなかった販路も見直し、思い切って自社通販で販売することに決めたのです。

 

もちろん売れなければ、在庫の山が残るばかりです。売る前は、その不安がいつも頭をもたげました。

 

しかし、売り出してみると、一気に予約が殺到し、数ヶ月待ちのヒット商品になりました。

販売数が増えたことのみならず、粗利益率が格段に上がりました。

 

それによって、一気に借入金も減らすことができ、そして、社員へのボーナスも多く支払うことができました。

 

しかし、過去、固定費の増加によって、借入金で首が回らないほどの苦労があったため、人員体制も無理して拡大せず、堅実な経営を続けていることは、この経営者のすごいところです。ただ、既存社員には十分に報いて、一層、会社としての団結力や推進力も高まったと言います。

 

またある資材の卸売業の経営者も、当社に初めてご相談があったときには、借入金の負担からか、少し痩せ、ほっそりした雰囲気があり、顔色もあまり良さそうではありませんでした。

 

しかし、若い数名のやる気のある社員が、その経営者と一丸となって、懸命にカテゴリーキラーづくりに取り組んだ結果、その後、2期増収増益で、さらに今期も絶好調と聞きます。

 

増収増益によって、その若い社員の方々には多くの賞与を与え、一緒に危機を乗り越えたことに、少しでも報いることができたと話されておりました。

その頃には、その経営者も少しふっくらされ、顔色もとてもよい雰囲気になっていました。

 

ポイントは、売上を上げるのみならず、利益を高めることです。

 

売上が上がったとしても、ただ単に稼働が高まったり、忙しくなったりして、労多くして功少なしでは、経営者はもとより社員の苦労は報われません。

 

むしろ、利益率を高めていく経営こそが、社員に対して報いることのできる原資となり、賃上げができるとともに、少しでも高い給料を提示できることによる、優秀な人材の獲得にもつながっていくことになります。

 

もし、あなたが、賃上げへの対応による人件費の増加や、人手不足による人材採用難に見舞われているのであれば、なおさら、自社に、粗利益を稼ぎ出せるマーケティングパワーを身につけなければなりません。

 

そのためにも、今のまま経営していくのか、それとも、1つでもカテゴリーキラーを生み出して、粗利益率の高いビジネスに転換させていくのか、待ったなしで、今、すべての経営者に問われているのではないでしょうか。

 

追伸

では、どのようにしてカテゴリーキラーを作りだせるのか、粗利益の高いビジネスに転換できるのか、その具体的手法を、さまざまな事例とともに、お伝えするセミナーを隔月で行っています。

次回は、711()に開催いたします。

ご興味のある方は、以下サイトから、詳細をご確認ください。

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株式会社ミスターマーケティング

代表コンサルタント

吉田 隆太